研究概要 |
本研究はソフト層の捩れ磁気構造をX線磁気散乱法で調べることを目的とし、実験とシミュレーション計算を行なった。シリコン基板に三層膜SmCo_5(16.5)/Ni_<80>Fe_<20>(60)/SmCo_5(16.5nm)を分子線エピタキシー法で成長させた。基板に面内一軸磁場をかけ、下側のSmCo_5層とNi_<80>Fe_<20>層を成長させた後、基板を面法線周りに90°回転し、上側のSmCo_5層を成長させた。この試料の磁化曲線は二段の変化を示し、上下のハード層の磁気モーメントが磁場配向していることが確認された。ゼロ磁場でソフト層の磁気モーメントは膜厚方向に捩れた構造を取っていると予想される。X線実験は高輝度光科学研究センター(SPring-8)で行なった。円偏光X線のエネルギーをNi K吸収端に同調し、試料の鏡面反射を測定した。電荷反射率曲線は明瞭なKiessigフリンジを示した。磁気反射曲線は非常にノイジーであるが、散乱角2θ【greater than or equal】1.1°の範囲に統計誤差を上回る変動が観察された。シミュレーション計算で予測された全反射臨界角付近(2θ〜0.7°)のピークと反射率振動は観察されなかった。X線分散面に対して印可面内磁場が0°、180°、90°、270°の方位で測定を行なったが、傾向は同様である。I(+)、I(-)の強度は強いが、磁気情報を含む差強度I(+)-I(-)は極端に小さくなる。第三世代放射光源での測定実験の結果,測定を制限しているのは十分な差強度を与えるだけの光源強度の問題ではなく,それより早く全計数率自体が検出器の性能限度に到達しているためであることが明らかになった.この問題は特徴的に強度変化の現れる散乱角領域が試料、及びその磁気構造に依存するために普遍的な問題ではないが,スプリング磁石構造においては本質的な問題であることがわかった。I(+)-I(-)を稼ぐためには長時間の計数が必要である。この点を改善すれば、磁気反射曲線が測定可能になる。
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