研究概要 |
1.Lennard-Jonesポテンシャルを用いて,約40000の原子のモデル結晶を作製し,分子動力学法により(c+a)転位の運動過程を調査した.(c+a)刃状転位に,2次錐面に対して純粋せん断歪を加えた場合,正せん断(<1120>引張に相当)では部分転位の状態で運動するが,逆せん断(<0001>引張に相当)では転位は双晶に変化して運動しない.転位に<1120>引張および<1120>圧縮歪をかけても同じ結果となった.しかし,同じ逆せん断ではあるが<0001>引張歪を加えると,転位は部分転位の状態で運動した.すなわち,転位の運動においては,せん断歪(せん断力)だけでなく,すべり面に垂直な歪も強く影響するという,これまでに全く論じられていない知見が得られた. 2.MgにLiを7at%および14at%加えた単結晶を作製し,温海から473Kにおける非底面すべりの活動を調査した.その結果<1120>引張では,この温度域でも2次錐面すべりが活動し,従来考えられてきた柱面すべりは活動しないことがわかった.また多結晶試料を引張試験した結果,伸びは純Mgでは約13%であるが,Mg-7at%Liでは約5%と低い値を示した.その転位構造をTEM観察した結果,純Mgでは(c+a)2次錐面すべりが活発に活動しており,2次錐面すべりがMgの延性に大きく寄与していることがわかった. 3.Tiにおける塑性変形の結晶方位依存性を調べるために,単結晶の引張および圧縮試験を行った.<0001>引張及び圧縮では<1011>1次錐面すべりが活動し,その降伏応力には1.5倍以上の差があることがわかった.また<1120>圧縮および<1100>圧縮を行った場合,いずれも柱面すべりが活動するが,前者ではほとんど加工硬化しないが,後者では加工硬化しており,変形挙動が方位に強く依存することがわかった.
|