本研究は、イオン注入により誘起される非晶質合金の局所的結晶化を利用して非晶質マトリクス中に微細結晶粒を埋め込んだ「微粒子分散複合材料」の新しい作成法について、結晶化が始まる最低(臨界)注入量や微結晶粒の分散状態等の注入時温度依存性を中心とした基礎的データを収集し、単純な熱的結晶化による方法と比較して、プロセスとしてより高度な制御が可能かどうかを検討する事を目的とする。注入イオン種には被注入試料中で化学的に不活性なヘリウムを用いる。注入対象には金属-メタロイド型非晶質合金の代表としてFe-B合金系(これについては以前に部分的に結果を得ている)を、また金属-金属型非晶質合金の典型例としてFe-Zr合金系を用い、両者を比較検討する。 本年(平成13年)度は、(1)イオン注入装置への注入時温度の精密制御機構の付加;(2)スパッタ法による非晶質Fe-Zr合金系の作成と未注入試料の評価;(3)Fe-Zr合金系未注入試料の熱的安定性の評価;(4)数点の代表的注入時温度における結晶相生成量の注入量依存性の測定;(5)注入時冷却により結晶化が抑制された試料のポストアニールによる熱的安定性の評価;(6)熱的安定性評価に用いる真空アニール炉の整備-の6項目の実施を交付申請時に予定した。さらに、(7)既に一部検討を行ったFe-B合金系についても注入時の温度制御機構改良後のイオン注入装置を用いて補完的なデータを得ることにした。しかしながら、作業(1)の実施中に注入装置のイオン源が劣化し、安定した注入レートが維持できない状態になったためその修理に時間を費やさざるを得なかった。このため、(1)、(2)、(9)、(7)については作業および評価を完了したが、(3)、(4)、(5)については現在実験を継続中であり平成14年5月中旬に完了見込みである。
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