本研究は、不活性なヘリウムイオンの注入により誘起される非晶質合金の局所的結晶化過程が、Fe-Bを代表とする金属-メタロイド型とFe-Zrを代表とする金属-金属型の両非晶質合金系でどのように異なるか、また、非晶質マトリクス中に微細結晶粒が埋め込まれた「微粒子分散複合材料」の新たな作成法として、単純な熱的結晶化よりも高度な制御が可能なプロセスとなり得るかどうかを検討する事を目的として行った。本年度は、イオン注入装置のトラブルのため昨年度から持ち越されたFe-Zr系に関する(1)未注入試料の熱的安定性の評価、(2)代表的注入時温度における結晶相生成量の注入量・注入エネルギー・注入レート依存性の測定、(3)注入時冷却により結晶化が抑制された際のポストアニールによる熱的安定性の評価を行い、その結果を元にFe-BとFe-Zrの両合金系に対して(4)最適な注入エネルギーと注入レートにおいて結晶化が始まる臨界注入量の注入時温度依存性を詳しく測定し、(5)注入後試料の内部転換電子メスバウアー分光スペクトルの内部磁場分布の解析から生成結晶粒の分散状態を評価することを予定した。しかしながら再度イオン注入装置のトラブルにみまわれたため、(2)〜(4)については部分的な結果を得るに留まった。このため、(5)についてもFe-B系に限定して解析せざるを得なかった。しかしながらFe-B系については、期待通り結晶微粒子の粒径が注入時温度に敏感に依存することを示唆する結果が得られたので、これについて発表を行った。
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