研究概要 |
本研究では、Bi添加Geカルコゲナイドアモルファスにおけるn型伝導性発現メカニズムの解明を目的とした。(GeSe3.5)100-xBix系アモルファスの作製法にメカニカルミリング法を適用し、EXAFSをはじめとする様々な構造解析実験を通して、アモルファス化過程の追跡、アモルファス中に形成される構造単位の特定および、アモルファス局所構造の定量解析を行った。 X線回折およびX線吸収微細構造(EXAFS)解析を通してアモルファス化過程を詳細に追跡した結果、元素単体出発(Ge, Bi, Se)の場合、3段階の過程を経てアモルファス化することが分かった。ミリング初期の非常に早い段階で、BiとSeとの間に化学結合が生じ、まず結晶性Bi2Se3が生成する。生成した結晶Bi2Se3は、その後の短時間のミリングにより容易にアモルファス化する。長時間のミリングを経て結晶Geの共有結合が徐々に切断されアモルファス中に取り込まれて、Ge-Se結合を生成しネットワーク構造が完成する。EXAFSおよびX線回折実験から得られる動径構造関数の定量的な解析により、アモルファス化によって形成されるBi-Se間の結合距離は2.76A、配位数は約3であることを突き止めた。これ等の結果は、アモルファス化の進行に伴って、局所的に結晶Bi2Se3よりさらに共有結合性の増した構造ユニットが形成されることを強く示唆している。 GeSe4/2ネットワークにBiSe3/2三方錘構造単位が付加していく構造モデルが提唱された。以上の結果から、アモルファス化初期におけるBi-Se結合の生成およびアモルファス化進行に伴う共有結合性BiSe3/2三方錘構造単位の形成が、本アモルファス系のn型伝導性発現に強く関与していることが突き止められた。
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