研究概要 |
本研究は、分子軌道法を用いて、電子状態を考慮したポテンシャルエネルギーを分子動力学法に導入する方法を検討し、ガラス状態の物質へ適用することを目的とした。具体的には、非経験的分子軌道法のひとつであるGAMESSを用いて、基本構造となるクラスタのポテンシャルエネルギーを求め、これを原子間距離の関数(2体)あるいは原子角の関数(3体)のポテンシャルの関数で分解することにより、ポテンシャル関数のパラメータを設定した。対象とした系は、SiO_2,B_2O_3,P_2O_5であり、SiO_2系では、2体ポテンシャルでも2体+3体ポテンシャルに対しても、ポテンシャルパラメータの設定はでき、(1)ガラスのX線回折による動径分布関数、中性子線動径分布関数の実測との比較を行った。(2)α-quartz結晶の振動モードとその波数を算出し、実測との比較を行った。また、これまで報告されているTTAMポテンシャルやBKSポテンシャルとの比較も行った。動径分布関数や振動モードとその波数と実測との比較では、本研究で設定したパラメータを用いた場合でも、これまでのTTAMポテンシャルやBKSポテンシャルと比較して、遜色ない一致を得ることができた。しかしながら、動径分布関数の一致の改善の方向と振動モードと波数の一致の改善の方向が必ずしも一致しないことがわかった。B_2O_3,P_2O_5系に対しては、2体ポテンシャルのパラメータの設定を行った。ここで、得たポテンシャルパラメータを用いて、ガラス状態のシミュレーションを行い、ある程度実際の結晶構造やガラスの構造解析の結果と対応する構造モデルが作成できることを確認した。
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