研究概要 |
SiC基板の表面分解法によるカーボンナノチューブ膜の生成初期過程を調べるために,SiC単結晶基板(Cree社製,6H型,on-axis, C面研磨)の真空中加熱実験を,スポット集光型赤外線ゴールドイメージ炉(ULVAC真空理工製)とターボ分子ポンプとを用いておこない,表面の構造変化を分光エリプソメトリ測定によって調査した. その結果,真空度3×10^<-4>Pa,1200℃で10分間加熱した基板の表面で,エリプソメトリスペクトルにかなり大きな変化が見られた.これは,SiCの表面分解がこの温度ですでに開始しているためであると考えられる.従来の高分解能TEMによる表面観察では,SiCの分解とカーボンナノチューブの生成とが観察されるのは1300〜1500℃以上の温度であるので,分光エリプソメトリによる光学的測定では,それよりも低い温度での分解開始のさいのわずかな変化をも捉えうることがわかった. この基板表面変化を,加熱温度・加熱時間を種々に変えてくわしく調査した.その結果,900〜1100℃の加熱では,SiC基板表面上にあった自然酸化膜が減少することがわかった.そして1150〜1300℃の加熱ではエリプソメトリスペクトルに大きな変化が現れ,基板表面にvoidを含むグラファイト層ができ分解反応がおきていることが認められた.さらに,1300℃で長時間(80〜640min)の加熱ではエリプソメトリスペクトルはさらに異なる大きな変化を示し,この条件下でカーボンナノチューブ層が生成・成長していることが捉えられた.
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