金属アルコキシドを出発原料とするゾルーゲル法は、生成反応の大部分が室温付近で進行するため、生成する薄膜の微細構造制御や有機物との複合化という点で大きい可能性を有しており、新規な機能性材料の開発においてますます重要な位置を占めるものと期待される。本研究では、このような金属アルコキシドの化学修飾やゾルへの有機物の添加などによるゲル化過程の制御を、有機物複合化によるゾル-ゲルプロセスの制御として統一的にとらえ、その方法論を確立するとともに、これによって機能性の高い無機薄膜を開発することを目的として研究し、以下の成果を得た。 1)ジルコン酸チタン酸鉛ゾルへのアビエチン酸添加効果の検討と強誘電体膜の作製 検討したアビエチン酸誘導体のいくつかが、ジルコン酸チタン酸鉛ゾルのゲル化を抑制することを見いだし、アビエチン酸誘導体を添加することで、スクリーン印刷に適切な粘度のペーストを作製できることを示した。また、それを用いて比較的低温でジルコン酸チタン酸鉛の強誘電体膜を作製できることを明らかにした。 2)化学修飾剤および有機高分子添加によるゲル膜のナノ構造制御 各種有機物を添加したチタニアゾルから得られるゲル膜の微細構造を化学修飾剤の種類、高分子の種類・分子量などを変化させて検討し、微細構造が作製条件によって大きく異なることを見いだした。さらに、微細構造制御して得られるチタニア薄膜を用いて色素増感型太陽電池を作製し、表面積の大きなチタニア薄膜を用いた場合に、太陽電池の特性が良くなることを明らかにした。 3)β-ジケトンで化学装飾した金属アルコキシドから得られるゲル膜の微細構造 種々のβ-ジケトンで化学修飾した金属アルコキシドから得られるジルコニアゲル膜の光感応性を利用して、二次元的な周期構造をもつ回折格子(二次元回折格子)の作製に成功し、それらのコーティングが反射防止に有効であることを示した。
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