短繊維ガラス強化ポリアミド(N66/SGF)の疲労挙動は下記3段階に分けられた。 1)初期段階では、疲労進行とともにtanδおよびAE発生頻度が低下する。 2)中期段階では、疲労進行とともにtanδおよびAE発生頻度は変化のない定常状態となる。 3)後期段階では、疲労進行とともにtapδおよびAE発生頻度が増加する。 疲労進行中の平均音速変化においても上記挙動と対応した。とくに、負荷応力が高いとき、平均音速は初期から低下し、後期段階に変わるとともにその減少度が著しくなった。それに対し、後期段階が少ない低負荷レベルになると、初期に音速が増加し一定値となりに後期段階の出現とともに音速は低下するようになる。これら試験片空間中での音速分布は、負荷応力レベルにより異なった。すなわち、高負荷応力レベルでは、音速低下は、試験片中央部に局在化するのに対して、負荷応力レベルが低下すると、音速変化は小さくなるとともに、その分布は一様化した。 以上より、N66/SGF疲労破壊には下記に示すような二種類の機構が存在することを明らかにした。 1)疲労損傷が局所化され破壊に至るType A型(負荷応力レベルの高い低寿命において現れる):これら疲労損傷は、主にいくつかのガラス繊維切断部の集積およびそれらの成長によるものである。 2)疲労損傷が局所化されず、試験片全体に分散した後、破壊に至るType B型(負荷応力レベルの低い高寿命において現れる):これらの疲労損傷は、主にガラス繊維端部より発生する多数の母材クラックの成長によるものである。
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