前年度は、必要な設備を購入し、実験装置を組み上げ、電気伝導性の実験を試みた。そこでは、マトリックス高分子として塩素化ポリエチレンならびに塩素化ポリプロピレン、低分子としてヒンダードフェノールやヒンダードアミン等の極性低分子を用いて、実験を行い、その測定手法と解析手法を確立した。本年度は、極性低分子としてシリカゲルを分散材として用いた場合の分散状態と分子運動性ならびに力学的な特性の変化を調べた。その結果、シリカ微粒子と塩素化ポリエチレンが熱処理によって化学結合することがわかった。これは、これまでの水素結合に基づいたヒンダ-ドフェノールやヒンダードアミン等の極性低分子との混合系よりは、より強い分散材とさらに母体材料として結晶性高分子固体であるポリプロピレンをもちいシリカゲル微粒子とのマトリックスとの相互作用をもった複合材料になることが判明した。この分散材と化学結合した結果、応力の値が大幅に増大するとともにゴムの特性が改善されることがわかった。さらに、シリカ表面を処理して疎水性を増してやるとマトリックスと分散材の化学結合度が低下して応力が軟化することも分かった。その結果、水素結合の強弱によって分子運動性が大きく影響され、さらにはバルクの力学特性に大きく影響を及ぼすことが分かった。逆に、水素結合状態を変化させることによって、軟質なゴム状態から硬質なプラスチックの性質が発現することも分かった。また、延伸過程中で、水素結合の消失や発現さらには組み換えが起こっていることが示唆され、材料の応力緩和機構に直接影響を及ぼすことが分かった。
|