1.研究目的 セラミックスを超塑性変形すると粒界に空隙が発生・成長し、また粒成長や粒アスペクト比の変化等が生じる。その結果、硬さや曲げ強さは劣化するが、破壊靭性はある程度向上する。これら機械的性質の変化は主に粒界空隙に起因するものと考えられるが、粒成長や粒アスペクト比の変化の影響も含んでいる。そこで、超塑性変形した試片にHIP処理を施して結晶粒組織は変わらないが空隙は完全に収縮消滅した試験片を作成し、HIP処理前後の機械的性質並びに熱的性質を比較して、粒界空隙の影響を分離して検討する。セラミックスを超塑性変形することにより生じる微細で均一な粒界空隙の、体積率、大きさ、分布、形状等と破壊じん性、耐熱衝撃性の関係を定量的に調べ、破壊じん性、熱衝撃抵抗等の材料機能が向上する最適な条件を明らかにするとともに、そのメカニズムを調査・検討する。 2.現在までに得られた主な結果 (1)臨界温度差ΔTcは、Hasselmanの式から予想されるように、初期クラック長さlの-1/2乗に比例すること。 (2)ΔTcはキャビティ体積率Vcが大きくなるほど向上する。これは、急冷中発生する熱応力を、キャビティが弾塑性的に収縮または膨張することにより緩和するためと考えられること。 (3)ΔTcは上限(210K)を示した。これは、573K〜473Kまで大気中で加熱後、氷水中に急冷する際、H_2O成分の存在に起因して応力腐食割れが生じるためと考えられること。 3.次年度の計画 次年度は、ΔTcと粒界空隙量、空隙の形状、寸法、分布状態等との関係を系統的、定量的に調べる予定である。
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