代表的電子セラミック材料である半導性チタン酸ストロンチウム(SrTiO_3)は、粒界に形成された静電ポテンシャル障壁(二重ショットキー障壁)に起因した特異な電気特性を示す。この障壁は、バンドギャップ中に形成された捕獲準位にキャリアとなる電子が捕獲されることにより形成されると考えられている。しかしながら、捕獲準位の起源などの詳細なメカニズムについては未だ明らかにされていない。本研究では、主に、粒界原子構造と粒界電気特性の相関性を調べ、二重ショットキー障壁形成のメカニズムを明らかにすることを目的とした。解析にはモデル粒界を有するNb添加SrTiO3双結晶を用いた。種々の方位を規定した双結晶を系統的に作製し粒界構造と粒界電気特性の相関性を調べた。まず、傾角が数度の小傾角粒界を作製しその粒界構造を高分解能観察法により解析したところ、いずれの粒界もバーガースペクトルを[001]とする刃状転位から構成されることが見出された。その粒界転位密度は双結晶の傾角に依存し、傾角が増大するに従い粒界転位密度が増加すること、および、粒界電気特性で認められる電圧-電流特性における非線形指数が増大することが分かった。これらの関係から、粒界転位一本が障壁形成に関与する捕獲電子数を見積もったところ、約10^6/cmであることが見出された。一方、CSL理論において整合性の高い粒界として分類されるΣ13粒界について、整合性が同じで粒界面の異なる双結晶を作製し同様な解析を行った。その結果、整合性が同様な粒界に於いても粒界面が異なる場合には非線形係数が異なることが分かった。この原因として、粒界部で点欠陥の生成消滅挙動が粒界構造に依存して変化することによると考えられた。
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