研究概要 |
本年度は,Al-1mass%Cu合金,Al-2mass%Cu合金およびマグネシウム合金AZ80の析出物粗大化に及ぼすクリープ歪の影響を詳細に検討した.何れの合金においても,クリープ歪が析出粒子の粗大化に大きな影響を及ぼすことが確認できた.これらは非鉄合金の例であるが,昨年度検討したT91鋼のように,先進耐熱鋼は何れもマルチンサイト変態で導入された多くの転位を含み,それらの転位は微細な析出物によって固着され,その結果として高い高温強度が実現しているので,歪によって加速される析出物粗大化現象は,実用上極めて重要であることが確認できたことになる.本年度は,これらの実験的な検討に加え,溶質雰囲気を持つ転位の運動に関する数値シミュレーションを行った.この計算結果を基にして,溶質雰囲気を持つ転位の運動が溶質の輸送を加速し,析出物の成長速度を促進するとする転位モデルを提案し,実験結果と比較した.その結果,このモデルによって実験結果が首尾よく説明できることが分かった.結果の一部は,国際会議Plasticity 2003,Quebec, Canadaおよび13th International Conference on Materials, Budapest, Hungaryにおいて発表する.
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