初めに-近年の各種エンジンの高性能化に伴い、燃料中に微量に含まれる不純物がこれら機関の高温部に付着して構成材料を甚だしく腐食させる現象が問題になっている。特にNi基超耐熱合金が多用されるガスタービンエンジンでは運転温度が高いこともあって、1000K以上で大気中のNaClや燃料中の微量硫黄によりNa_2SO_4系の粒界腐食を起こして、応力負荷環境下で酸化と複合して反応が促進され、超耐熱合金の高温高負荷条件下での使用の大きな障害となっている。本研究ではWaspaloyとその基本合金であるNi-20%Cr合金を試料とし、Na_2SO_4の溶融塩腐金法で生成した硫化物スケールを観察して硫化現象を解析した。 結果-供試合金をNa_2SO_4中、1173-1273Kで最大72ks硫化した試料のスケール近傍における組織を観察した。スケールは試料表面の外部スケールと合金内部のサブスケールから構成されていた。X線回折、EPMAによると、Ni-20%Cr合金の前者はCr_2O_3、後者はCr_2O_3、Cr_2S_3、Cr_5S_6から構成されていた。同様な解析をWaspaloyについても行った。Ni-20%Cr合金とWaspaloyの各温度で生成したサブスケールの厚さと硫化時間の平方根との関係を求めたところ、両者の間にはほぼ直線関係が認められ、拡散律速を示唆する放物線則が成立した。WaspaloyはNi-20%Cr合金に比べて、高温ほどサブスケールの生成が抑制される傾向を示した。サブスケール構造を3次元的に詳しく観察するため、Ni-20%Cr合金に有機溶媒系溶解法を適用した。溶解液には臭素+臭化セチルピリジニウム+アセトニトリルを用い、高温硫化した試料の合金部のみを溶解させ、硫化物相の原形を保持したまま残した。本研究により、粒界に沿った特徴的な粒界硫化物スケールの立体構造を直接SEM観察することに成功した。
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