Siデバイス用Cu配線材では、熱処理中に発生するマイクロボイドが開発の課題になっている。高信頼Cu配線の実現には、配線抵抗値の増加や機械的強度の低下といった致命的な問題を引き起こすボイドの抑制手法を早急に確立しなければならない。従来、配線材に発生するボイドは、熱処理中に配線材と基板(あるいは層間絶縁膜)の熱膨張係数の違いに起因して発生する熱歪みによる、一種のクリープ現象として扱われてきた。しかし実際にCu膜中に発生するボイドのサイズ・頻度は、熱歪みの緩和のみで説明することはできない。昨年度はCu膜中のマイクロボイド形成の要因として、Cu膜中に含まれる不純物(酸素あるいは酸化物)に着目し、実験的検討を行った。その結果、膜中の不純物や表面・界面の酸化物が、還元雰囲気での熱処理中にH_2Oバブルとなり、熱歪みの有無に関わらずボイドが形成されることを明らかにした。本年度は、実際のCu配線に用いられているめっきCu膜において、上記のH_2Oバブルによるボイド形成が見られるか否かを調べた。透過型電子顕微鏡による断面観察により、めっきCu膜と下地となるスパッタCu膜の界面には数十nm径のボイドが存在し、還元雰囲気中の熱処理後これらのボイドは数百nm径に成長することを見いだした。同実験結果により、めっき液中に含まれる有機系添加剤や酸化膜が界面に存在する可能性が高いめっきCu配線材では、還元雰囲気での熱処理を施すことによりボイド成長を促進してしまう危険性があることが示された。また、種々の成膜条件で作製したCu膜の構造解析を詳細に行った結果、400℃程度の熱処理中(圧縮歪み)に下地との界面にボイドが形成される場合があることが解った。同ボイドはCu膜の粒界上および粒界三重点上にのみ形成されていた。これらの界面ボイド形成機構を検討した結果、下地との密着性の影響を強く受けており、熱処理温度や膜厚、膜の粒径分布と密接な関係にあることが明らかとなった。
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