ULSIデバイスにおいて高性能Cu微細配線開発が急務となっているが、Cu配線中に発生するマイクロボイドがデバイスの高性能化・高信頼化に致命的な影響を与えることがわかってきた。マイクロボイドの発生原因について、従来の熱処理によるクリープ現象(熱歪み)に起因した形成機構とは異なる"特異なボイド形成機構"の存在が本研究における実験で明らかとなった。 現行のCu配線プロセスで使用されるスパッタリング法やめっき法において、Cu膜作製とともに膜内に成膜法に特有の酸化物(CuO)や有機添加剤などの不純物が導入される。CuOを含んだCu膜において還元雰囲気(水素/窒素混合ガス)下での熱処理によりマイクロボイドの形成が確認され、CuO-H_2反応によるH_2O生成とボイド形成の関係が明らかとなった。また、めっき法で作成したCu膜はスパッタ膜に較べて多数のボイドが確認され、ボイド形成がめっき液中に含有する有機系添加剤に起因したと考えられた。Cu配線への不純物の導入は不可避であり、熱処理下における不純物によるボイド形成は配線開発に向けて懸念材料である。 一方で不純物による影響と考えられるCu膜中に形成するマイクロボイドとは異なり、Cu膜/基板界面においても同様にボイド(界面ボイド)が観察された。界面ボイドは熱処理雰囲気やCu膜表面状態、基板との密着性に大きく影響され、熱歪み効果が小さい高温中でもボイドが成長することを突き止めた。界面ボイドは上記の不純物や熱歪みとは異なる形成機構であると考えられ、Cuの表面・粒界拡散およびCu/基板界面拡散が支配的であることが明らかとなった。 本研究では、Cu薄膜におけるマイクロボイド形成機構について材料学的な知見が得られた。高性能微細配線の開発にとってマイクロボイド抑制法の構築が重要課題であり、"特異なボイド形成"の把握が不可欠な要素であると言える。
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