研究概要 |
高融点遷移金属シリサイドは、1500℃近傍での使用に耐えうる超高温耐熱材料として期待されている。とりわけ、C11_b相は結晶対称性が高く、多くのすべり系が活動することから延性相として、C40相は1500℃近傍にて異常強化現象を示すことから、超高温での強化相として期待されるとともに、両相の組み合わせにより、結晶学的類似性に起因した特異な層状組織が形成される。本研究では、FZ(光学式浮遊帯域溶融)法により、層状組織を一方向にそろえた単結晶ライクな複相シリサイド結晶の作製に成功し、構成組織の詳細について明らかにした。層状組織内の各相の層間隔、ならびにC11_b相の体積率は、熱処理時間に依存した。C11_b相の析出は、時効6時間後で既に始まっており、その析出量は、24時間を越えたあたりで飽和する。しかしその後も各相の粗大化は進行し、168h後には、SEM内にてC40相で2.1μm、C11_b相で2.7μmの層間隔を持つ粗大な層状組織となった。こうしてできた層状組織は、そのほとんどが以下の関係式で表される異相界面であり、この関係を満足する場合には、平滑な界面組織を示した。 ^(0001)_<C40>//^(110)_<C11_b>/,<1^^-21^^-0]_<C40>//[11^^-0]<C11_b>,<101^^-0]_<C40>//[001]_<C11_b> C40相間には、V1、V2、V3から成る3つのC11_bバリアントと、120°の回転関係を持つC11_b/C11_b同相界面が認められた。 さらに興味深いことに、異相界面では界面転位の存在は認められず、同相界面中でのみ、網状の界面転位が存在する。その結果、同相界面では高い粒界エネルギーを、異相界面では格子歪みの蓄積が予想され、実際に、熱処理時間の増加とともに、これら界面の消滅を駆動力とするC11_bバリアントの粗大化、さらには上式の関係を満足しないC11_b相の析出が認められた。こういった層状組織の粗大化は、同相、異相界面での整合関係と密接な相関があるものと考えられる。 次年度はさらに方向制御化に成功した複相シリサイドを用いて、超高温材料としての塑性変形挙動について明らかにする予定である。
|