研究概要 |
スパッタ法を用いて、ステンレス表面に光誘起機能を有するTiO2薄膜を形成し、超親水性を付加することを主眼に研究を行った。RFマグネトロンスパッタ装置を用いて、代表的な素材であるステンレス鋼、Cu、AlにTiO_2の薄膜を作成した。沸騰水環境においては、現在主流であるディップ法で作成したTiO_2膜では密着性に問題があり利用できないが、本手法で作製した薄膜に耐性があるかを評価した。本グループで考案した、超微小硬度密着性評価法により、沸騰水環境での耐性との関連を求めた。スパッタ法での成膜がディップ法で作成したものより非常に優れた耐性を持つことを明らかにした。さらに、基板にバイアスrf電力を加えることにより、膜の結晶性が変化し、密着性が増加することを見出した。自作の接触角測定装置により作成条件と接触角度の関係、時間変化を測定した。さらに、光学特性測定、XPS測定、及びXRD測定を並行することにより超親水性の原因を構造面から検討した。工業化を視野に入れて、基板の大型化と、回転導入機構を組み込むことによる複雑形状への対応を検討した。スパッタチャンバー内部のスパッタ粒子の移動、析出をシミュレートすることに成功した。紫外線照射により発現した超親水性は、時間とともに劣化することも知られているが、3eV以上のバンドギャップを有し発光効率が高いZnS, ZnOなどの半導体物質添加し紫外線発光効率を評価した。'この結果、初期接触角度は非常に向上するが、暗所保持特性は逆に劣化することが見出され、今後の課題となった。本研究で作成したTiO_2膜は、下地との密着性及び耐食性の向上ために多層構造を形成している。紫外線照射したときの光電気化学特性も評価し、本研究の主眼のひとつでもあるTiO_2の光電気化学的酸化作用による不働態維持効果を評価した。
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