研究概要 |
前年度までの研究において,引張り強度,クリープ強度および疲労強度に及ぼす2次結晶方位の影響について体系的に調べた.その結果,2次結晶方位の影響が最も顕著になる温度領域で,Re添加量の高い先進合金のクリープ強度が著しく低いことが明らかになった.本年度は,この知見を基に,さらに実機環境を考慮して研究を進めた.即ち,ガスタービン動翼用単結晶Ni基超合金の耐用温度の向上は,高温域で強度低下するマトリックスを強力に固溶強化するRe(レニウム)添加により達成されてきた.即ち,CMSX4に代表される第2世代合金では約3wt%Re, RR3000(別名CMSX10)に代表される第3世代合金では約6wt%のReが添加されている.航空機の離陸時においてタービン動翼の空冷孔付近に負荷される低温高応力下での強度特性評価を行い,Re添加量の高い先進単結晶超合金は,合金系によっては低温高応力下でクリープ強度が著しく低いことおよびそのメカニズムを,ケンブリッジ大学との共同研究において明らかにした(実績(1)).この劣化のメカニズムが,2次結晶方位の影響の主因である{111}<112>すべりにより生じるため,本年度はTMS75,TMS82+,CMSX10などの先進超耐熱合金について,航空機の離陸時においてタービン動翼の空冷孔付近に負荷される低温高応力下での強度特性評価を行い,2次結晶方位の影響の主因である{111}<112>すべりとクリープ強度との関係について体系的に調べた.この結果,先進合金は{111}<112>すべりが生じやすく2次結晶方位の影響が大きいため,2次結晶方位を含む結晶方位制御が重要となることを明らかにした.
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