本研究はプラスチック光ファイバを通信分野で応用するために必要となる周辺光デバイスを実現するための基盤となる技術を確立することを目的に研究を展開した。昨年度は光増幅デバイスの設計を行い連続光による光増幅が理論的に実現可能であることを見出した。さらに、機能性材料の開発・光学特性評価、高性能プラスチック光ファイバ増幅素子の作製技術に関する研究を行った。その結果、PMMA中に高濃度の有機蛍光化合物をドープすると濃度消光を起こすために発光強度が減少し、光増幅特性を低下させることがわかった。そこで、本年度は分子レベルで規則的構造を有するDNAに希土類キレート化合物を相互作用させることによって、発光強度を向上させたDNA複合光増幅材料を合成し、その光学的性質を明らかにすると共に、通信用次世代デバイスの実用化に向けての基盤となる技術を確立することを目的とした。 DNA-CTMA複合体とEu-FODをCHCl_3-CH_3CH_2OH混合溶媒中でインターカーレーションすることにより有機蛍光化合物を分子レベルで構造化することにより光増幅材料を合成した。さらにこの材料のUVスペクトル、励起蛍光スペクトル、蛍光寿命、屈折率、蛍光量子収量を測定することにより誘導放出断面積と吸収断面積を求め、理論的な利得を導出した。その結果、DNAと相互作用させることによって5倍以上の発光強度が得られることが確認された。これは、DNA-CTMAのMajor Groove溝にEu-FODが入り込むことによって希土類キレート分子が孤立化し、その結果、発光強度の増大が見られたと考えられる。さらに様々な濃度の光強度測定を行った結果、高濃度でも濃度消光を起こさないことを見出し、プラスチックファイバ中に蛍光材料を高濃度ドープするためのデバイス作製技術を提案することが可能となった。
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