研究概要 |
所定の熱処理を施したTi-6Al-4V合金に水酸化ナトリウム水溶液浸漬(アルカリ処理)することよりハイドロキシアパタイト(HA)析出すなわち,骨類似組織発現機能の付与を実施した.これら機能を付与した材料の生体との適合性をin vitroおよびin vivo評価した.析出したHA膜はTi合金からHAの傾斜構造を有している.力学特性の自己修復機能の発現とその機構から,チタン合金と傾斜膜(Ti基材〜HA)の強度差により,チタン合金で最初に降伏が生じ,き裂先端の鈍化および応力緩和が生じ,外部の応力拡大係数の低下を誘導することで破壊靭性が見かけ上増加する自己修復機能を見出した. 長軸径50〜100μmの繊維状HAを合成粉末から薄円板成形体を作製し,1000℃〜1300℃で焼成することで開放気孔を有するHA多孔体を作製した.このHA多孔体にメタクリル酸メチルモノマーを含浸させ,ラジカル重合(60℃)によりHA/PMMAコンポジットの作製へ発展させた.コンポジットの全気孔率は0.3〜10%(多孔体:27〜52%),破壊靭性は3.7MPa√<m>を示すなど,低弾性率を維持したHAの高破壊靭性コンポジットが得られた.弾性率の高い多孔体に弾性率が低く延性の大きな樹脂が導入された場合,HAセラミック内を進展するき裂面を樹脂が架橋することで高靭化されるという高靭化機構を提案した.コンポジットの生体適合性は,骨芽細胞を用いたin vitroおよびウサギ・ラットを用いたin vivo評価した.いずれの評価においてもcontrolに用いたHAと同等な高い生体活性を示した.ウサギを用いたコンポジットと骨組織との生体内反応は,新生骨が直接結合し,その結合強度はHAと比較して妥当な値であった.本コンポジット材は骨と類似した力学特性,かつHAと同等の生体適合性を保持することから,新規な硬組織代替材料として臨床応用が期待できる.
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