研究概要 |
ECAP法による微細結晶作製のための,強変形過程中の変形挙動解明を目的とした分割可能なダイスを設計,製作した.本ダイスは現在特許申請中である.このダイスで純銅単結晶および多結晶を用いて微細結晶を作製し,変形過程中の転位構造変化や微細化の機構について検討するとともに,1kmol/m^3NaNO_2水溶液中で応力腐食割れ(SCC)試験を行い,SCC感受性,き裂の発生・伝播機構を明らかにした. ECAP法による微細結晶形成の機構を単結晶および多結晶銅を用いて検討した結果,多結晶銅では1回のECAP加工により粗大結晶粒内に形成されたサブミクロンサイズのセルが,ECAP加工を繰返すごとに微細粒と成り平均粒径が約200nmとなる.単結晶材でも1回のECAP加工でサブミクロンサイズのセル壁が形成されるが,繰返しECAP加工を施しても微細化はせず,微細集合組織の様相のセル壁の形成のみで,微細化には多結晶に存在する既存の粒界が大きく寄与することを明らかにした. 上記方法で作製した微細結晶(Ultra-Fine Grain, UFG)銅についてSCC試験を行った結果,UFG銅のSCC感受性は実用多結晶銅のそれより極めて低いことが明らかとなった.さらに、き裂の発生,伝播は粒界であり粒内き裂は皆無である.き裂先端では応力集中による再結晶が生じ,一方向の結晶成長が認められるとともに,局所的な粒界すべりが発生することをも明らかにした.
|