研究概要 |
<001>,<011>および<111>軸方位を有する純銅単結晶を育成し,これを素材としてECAP法により超微細結晶材を作製した.この強変形過程での結晶回転,集合組織の形成,転位構造の変化などについて金属物理学,結晶学,転位論などを駆使し,精緻に議論しいくつかの有意義な知見を得た. 加工時に初期方位の異なる7種の銅単結晶は1回のECAP加工により3つのグループに分類されることが明らかとなった.すなわち,強せん断変形過程でせん断面に平行にshear bandが形成されるグループ,試料挿入方向にdeformation bandが形成されるグループおよびshear band, deformation bandがともに形成されないグループである. ECAP加工はせん断変形のみの変形であるため,せん断集合組織を形成することを明らかにするとともに,これらのせん断面,せん断方向の方位は{111}<112>(A方位),{001}<110>(B方位)および{112}<110>(C方位)の3種に限定されることをも明らかにした. さらに,ECAPによる大傾角粒界の形成には転位網の形成後,転位の堆積による結晶方位差の増加以外に,安定方向への結晶回転による大傾角粒界の形成,房状のmicrobandによるマトリックスの硬化にに起因するshear bandの形成に伴うマトリックスの回転による結晶方位差の増加が生じたことなどの新しい知見を明らかにした. 腐食疲れ過程で極く一部に結晶の粗大化が認められ,この粗大化した結晶粒界にき裂が発生し,微細結晶粒界を伝ぱし,粒内き裂は全く生じない.また,多結晶および単結晶銅などに見られる固執すべり帯(PSB)の発生は見られないことなどを始めて明らかにした.
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