研究概要 |
次世代の高温材料として期待されているニオブ基材料の耐酸化性を改善するには,アルミニウムとクロムを同時添加することが有効であることが前年度の研究で明らかになった。一方,ニオブは耐酸化性に乏しいものの,高温硫化腐食環境では優れた耐食性を示すことが知られている。そこで,本年度はSO_2を含む酸化環境において,Nb-Al-Cr合金上により保護性の高いスケールを形成する可能性について検討を行った。ニオブを40at%程度含む3元合金では,SO_2を10%まで含む環境では酸化の進行が速くなり,保護性の向上したスケールは形成しないが,硫黄が合金/スケール界面にまで侵入することで,アルミニウムが優先的に反応することになり,アルミナが金属ニオブ中に分散するような内層スケールを形成することをはじめて明らかにした。この現象は,合金/スケール界面で硫化物としては最も安定なAl_2S_3が速度論支配で一旦生成する。このとき,硫黄分圧が低いために,ニオブやクロムは硫化物を作らないと考えられる。その後、Al_2S_3は熱力学的により安定な酸化物へと変化することで説明される。このようにSO_2を含む環境においてニオブを40at%程度含むNb-Al-Cr合金では,アルミニウムが優先的に酸化するがその酸化は内部酸化的に進行するため,連続的な保護性の高い保護アルミナスケールを形成するには至らない。しかし,さらにアルミニウム量を増やし,ニオブを減らすと,SO_2の有無にかかわらず,連続的なアルミナスケールが形成し,高い耐酸化性を示すことが明らかとなった。この場合,SO_2を含む環境下でも硫黄が合金/スケール界面にまで侵入することはなく,非常に緻密なアルミナスケールが形成していることを示す結果となった。また,この合金を耐酸化性乏しいTiAlにコーティングすると,密着性が悪く,充分な耐高温酸化性を付与できないが,TiAl上にアルミニウムをスパッタし,これをアノード酸化してアルミナ膜を形成した後,Nb-Al-Cr合金をコーティングすると,母材とコーティングとの間の相互拡散を防ぐとともに,密着性も改善され,耐酸化性が大きく向上することがわかった。
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