本研究の目的は、圧電アクチュエータの微小電気機械システムへの応用を目指して従来のものよりも高い機械的信頼性を有する傾斜機能圧電アクチュエータを開発することである。以下に得られた知見を記述する。 1.圧電板(PZT)内に金属(Pt)体積分率もしくは気孔率の傾斜構造を導入することにより電気ひずみを傾斜させることができ、それにより疲労破壊の起点となる接着界面のない、単一部材で屈曲モードを発現することができた。 2.傾斜型圧電アクチュエータの屈曲特性はその組成分布に依存し、最適組成分布が存在した。また、最適組成分布は積層理論によって容易に予測することができる。 3.最適組成分布におけるPZT/Pt組成傾斜型圧電バイモルフアクチュエータの屈曲量は従来型(直接接着型)に匹敵した。ゆえに、PZT/Pt組成傾斜型圧電バイモルフアクチュエータは屈曲特性を低下させることなく機械的信頼性を向上することができると推察される。一方、気孔率傾斜型モノモルフアクチュエータは従来型に比べると屈曲特性が劣ることから、更なる屈曲特性の向上を目指して、積層理論を用いて屈曲特性向上のための物性値分布設計を行ったところ、圧電定数が減少すると共に弾性率および誘電率が増加するような傾斜化を行うことにより、屈曲特性を向上できることが予測された。 4.屈曲特性向上のための物性値分布設計の実現に適した高い開気孔率を有する気孔率傾斜型プリフォームを作製し、含浸処理による更なる高性能化(機械特性・屈曲率の向上)の可能性を見出した。
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