研究概要 |
TiAl金属間化合物は,高温での比強度が高いため,次世代の軽量耐熱材料として実用化が期待されている。しかし,高温環境での耐酸化性の悪さがこの材料の実用化を妨げている。TiAl表面部におけるAl濃度の高い層の形成は,保護皮膜となるAl_2O_3の生成を促すことから,TiAlの耐酸化性能の向上を導くことが期待される。本研究では,1023KのNaCl-KCl-AlF_3溶融塩を用いてAlの電析を行い,電析と同時に進行するTiAlとの合金化によりAl濃度の高い表面層の作製を試みた。さらに,Al濃度の高い表面層が作製されたTiAlの耐酸化性能を未処理のTiAlと比較して評価した。得られた結果をまとめると,以下のとおりである。 1.AlF_3を含むNaCl-KCl溶融塩中,Ni試料をカソード分極すると-1.2V(vs.Ag/AgCl(0.1))以下の電位域でカソード電流の上昇が観察され,この電位域ではAl^<3+>イオンのカソード還元反応が起こることがわかった。 2.TiAlを基板試料とした場合,-1.3〜-1.6v(vs.AgCl(0.1))の電位で形成された電析物は層状の形態を呈し,その構成物はAl濃度の高いTiAl_3であった。これらの電析層はTiAlを均一に被覆し,TiAlとの密着性はきわめて良好であった。 3.電析層を被覆したTiAlを1273K,大気中で酸化試験を行った結果,酸化増量はきわめて小さかった。この場合,電析層表面には保護的なα-Al_2O_3皮膜の生成が認められた。 以上の結果より,溶融塩を媒体としたAlの電析によりTiAl表面部にAl濃度の高い電析層が形成され,これによりTiAlの耐酸化性能が著しく改善されることが明らかとなった。
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