研究概要 |
水溶液電気化学プロセスに、電位変調、光照射など併用することによって、さまざまな新規な機能性表面の創製が期待できる。本年度は合金の紫外光照射による不働態膜改質に及ぼす合金元素の役割の解明を目的として、NiおよびNi-18Cr合金に生成する不働態皮膜の光半導体的挙動とFe-Cr合金の光半導体挙動に及ぼす微量添加元素の効果を検討した。 NiおよびNi-18Cr合金に生成する不働態皮膜の半導体的性質を光電気化学応答および電気化学インピーダンス法によって測定したところ、Niは内層に3.8eVの禁止帯幅をもつp型半導体、外層は約2.4eVのn型半導体であることが分かった。Ni-18Crについても同様であったが、禁止帯幅がやや異なった。以上の知見よりNiおよびNi-18Cr合金の光改質が期待される条件が明らかとなった。 一方、Fe-18Cr合金にNb, Cu, V, Zn, Coを添加した薄膜をイオンビームスパッタリングを用いて作製し、その半導体挙動を検討した。電気化学インピーダンス法によって不働態皮膜中の欠陥密度におよぼす各添加元素の効果が明らかとなった。さらに、X線光電子分光によりこれら添加元素の不働態皮膜中での存在位置、状態が明らかとなった。すなわち、NbとCoは皮膜最表面に濃縮する傾向にあり、これらの不働態皮膜の欠陥密度を低下させる。また、Zn, Vは不働態皮膜中には殆ど存在ないが、不働態皮膜の欠陥密度を変化させる効果を持つことが明らかになった。これらの結果は不働態皮膜の光改質に及ぼす添加元素の効果について重要な知見をもたらす。
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