研究概要 |
材料の表面は環境との界面を形成するとともに、バルクとは異なる様々な構造を持つ。金属材料表面に生成する酸化物皮膜は、外部の環境から内部を隔離・保護する耐環境性とともに、環境との相互作用に基づく化学的、物理的な機能性を発現する。水溶液系プロセスを用いることにより、表面を構成する元素と水溶液環境に存在するイオン種などとの相互作用によって表界面にて自発的化学反応が生じ、材料表面を内部と全く異なる組成・構造に改質できるが、このとき電気化学あるいは光電気化学作用を組み合わせることによって、構造規制された自己組織化表面の創成が可能である。 本研究ではNiおよびNi-Cr合金光照射による表面改質、およびFe-Cr合金について光照射による電子状態解析を行った。 NiおよびNi-18Cr合金に波長315nmの紫外光を照射したところ、Niについて不働態皮膜中の水酸化物が減少し、酸化物が増大した。厚さに関しては有意な差は認められなかった。Ni-Cr合金については、紫外光照射により不働態皮膜中のCr濃度が僅かであるが増大することが認められた。 一方、Fe-18Cr合金上に生成する不働態皮膜は中性水溶液中ではn型半導体的挙動を示すが、酸性水溶液中ではp型半導体として振まうことを明らかにした。しかしながら、バンドギャップエネルギーは電位,分極時間及び添加元素の種類・量によらず一定となり、さらに伝導キャリア密度は添加元素の種類や量により変化することを明らかにした。さらに、n型半導体を示す不働態皮膜では光照射によって半導体薄膜/水溶液にホールが蓄積するために空間電荷層が薄くなることを明らかにした。このことは不働態皮膜中の電位勾配が変化し、不働態皮膜の改質が生じた可能性があることを示唆している。
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