研究概要 |
本研究では,超音波顕微鏡で測定される弾性表面波速度を用いて,電子デバイスの接合信頼性を評価する方法を確立することを目的とし,まず,接合信頼性を評価する上で必要となる薄膜の弾性定数を弾性表面波速度を用いて測定する方法について検討した.次に,はんだバンプ工法でフリップチップ接合された電子デバイスの熱応力分布および変形特性を有限要素法による数値解析によって求め,樹脂および基板の特性が接合信頼性にどのように影響を及ぼすのかについて検討を行った.本年度,得られた結果は以下の通りである. (1)異方性基板を用いた場合の薄膜被膜材の波動伝播モデルを用いて,波動解析で導出される反射関数の位相分析により,皮膜材の弾性表面波速度を求めるための理論計算を行った.基板に等方性材料の材料定数を用いて解析した結果は弾性表面波速度に対応する位相角が正確に求められるが,異方性基板を用いた場合には位相角が変動し,弾性表面波速度が正確に求められないことが明らかとなった. (2)薄膜・基板・被膜材の弾性表面波速度の関係式を簡易弾性理論から算出し,基板および被膜材の弾性表面波速度測定結果から薄膜のみの弾性表面波速度を算出する方法を確立した.また,得られた薄膜の弾性表面波速度から薄膜の弾性定数を逆解析することにより同定できることを明らかにした. (3)はんだバンプ工法を用いた半導体素子に樹脂の硬化温度から常温までの温度変化を加えると,樹脂の収縮によりはんだに圧縮応力止,この圧縮応力により導通が確保され,接合信頼性が保たれることが明らかとなった. (4)エポキシ樹脂の線膨張係数が高くなるほどはんだにかかる圧縮応力は高くなる.また,応力と線膨張係数の関係は任意の樹脂のヤング率に対してある一点から伸びる直線関係にあることがわかった.この関係から,樹脂のヤング率,線膨張係数から接合部の応力を評価できることが明らかとなった.
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