研究概要 |
炭素材料は燃料電池はじめ各種機器に採用されようとしており,接合を必要とするケースが増大している。これまで一般に用いられてきた炭素と反応して炭化物を生成する元素を含有する金属ろうを用いてろう付する方法では,ぬれ性が極端に悪く健全な接合が困難である。本研究はこれに代わって,フエノール樹脂に黒鉛微粉末および硬化剤を混錬したフエノール系樹脂接着剤を挿入してAr中で加熱加圧して炭素材料を接合する樹脂焼成接合法という新しい接合法の開発を目指したものである。 炭素材料として平成13年度に等方性高密度黒鉛,平成14年度にガラス状カーボン複合材を取上げ,平成15年度は樹脂含浸黒鉛について行った。得られた結果は以下の通りである。 (1)樹脂焼成接合温度が樹脂含浸黒鉛製造時の含浸フエノール樹脂の焼成温度(443K)の場合に最も高強度継手(樹脂含浸黒鉛母材強度の80%)が得られることを確認した。樹脂焼成接合温度をこれより50K下げた393Kおよび130K上げた573Kでは,フエノール系樹脂接着剤の硬化不十分による強度不足(樹脂焼成接合温度393K)と樹脂含浸黒鉛の含浸フエノール樹脂部の欠陥発生(樹脂焼成接合温度573K)に基づいて,継手強度が低下する傾向にあることも確認した。 (2)接合部の健全性であるが,上記何れの樹脂焼成接合温度においても,ボイド等の顕著な欠陥は認められず健全な継手が得られた。 (3)樹脂含浸黒鉛の接合前の表面状態(受入材,研磨材)が継手強度,接合部のボイド等の欠陥発生に殆ど影響しないことも確認した。
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