研究概要 |
複合化鋳造は、鋳造による成形性と異種材料との接合による高機能化を同時に達成する有効な手法であり、多くの工業的需要がある。本研究はこれを制御可能で信頼できる生産技術として確立するために、鋳物と心材の寸法および注湯条件から接合状態を判定する手法を見出そうとするものである。研究は次の3部から成っている。(1)円筒状鋳物端面への円輪および円板状心材の接合実験と差分法による伝熱凝固解析、(2)円管および丸棒の埋設鋳ぐるみのシミュレーション、(3)これらから得られる接合限界の整理および限界判定法の提案。これによって次の成果が得られた。 (1)埋設鋳ぐるみ、端面接合ともに、接合要件として「高温の心材と液相状態の溶湯の100秒以上の接触」が確定された。(2)上の熱的条件を満たす溶湯/心材体積比VRは、管および棒の鋳ぐるみでは8〜10、端面接合では約30である。(3)しかし、限界体積比は心材肉厚に依存し、小肉厚でも大肉厚でも増大する。すなわち、接合状態には体積比による相似則が成立たない。(4)接合可能な寸法範囲は、心材の肉厚tあるいは半径D/2と体積比の逆数1/VRの関係として表示でき、およその境界線を定めることができた。(5)t, D/2-1/VR線図は、(I)接合が鋳物の寸法に依存する小寸法領域、(II)ほぼ一定の限界VRをとる最適領域、(III)接合が心材の寸法に支配される大寸法領域、の3つに分けられる。(6)管鋳ぐるみの肉厚t-1/VR線図を基準とし、棒および端面接合に対して適当な換算係数を用いることにより、これらを統一的に取扱う可能性が示された。 さらに、関連する成果として(7)シミュレーションに適切な境界条件値および材料定数の範囲と計算結果に与える影響について多くの知見を得た。(8)鋼心材が鋳鉄溶湯中で溶融する過程とその条件を明らかにした。(9)WC-Co合金を心材とし、鋳鉄溶湯で鋳ぐるみ接合する場合についても、接合のメカニズムと接合の条件が明らかになった。
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