製鋼プロセスで発生する鋼中非金属介在物を利用した鋼の組織制御のための重要なデータとなるAl_2O_3-SiO_2-TiO_x系酸化物に関する熱力学測定を行った。 まず、Al_2O_3-SiO_2-TiO_x系酸化物の1873Kにおける相平衡を明らかにし、液相中へのAl_2O_3、TiO_xの最大溶解度はそれぞれ、28mass%、50mass%となり液相中でTi^<4+>/Ti^<3+>比は、SiO_2濃度の増加に伴い上昇すること等が示された。この事実とラマン分光測定の結果から、Ti^<4+>、Ti^<3+>ともにネットワークフォーマーとして働いていることが判明した。 次に、各成分の活量測定を行った。酸化物と炭素飽和鉄を平衡させ、Fe-C-Si合金中のSi濃度とFe-C-Si合金中Siの活量係数のデータより、酸化物中SiO_2の活量を求めた。一方、化学平衡法では測定が困難な、卑な金属の酸化物であるAl_2O_3の活量についてはAl_2O_3-SiO_2-TiO_x系酸化物とAl-Si-Ti合金を共存させ、クヌードセンセル質量分析器を用いて行った。Al、Si、AlO、SiOの蒸気圧から酸化物中のAl_2O_3とSiO_2の活量を求め、SiO_2の活量値については化学平衡法で求めた値と非常によい一致を示した。また、Al_2O_3-SiO_2-TiO_x系酸化物とAl-Si-Ti合金の平衡組成より、Toopの方法を用いて合金中各成分の活量を計算し、この結果からTiO_xの活量を算出した。測定した液相範囲ではSiO_2とTiO_xのAl_2O_3に対する親和性はほぼ等しいことが明らかになった。 以上の相平衡と各成分の活量に関する得られた知見により、介在物生成機構解明のための駆動力が定量的に示され、溶鋼中各合金元素間の相互作用係数を用いて任意の組成の酸化物と平衡する溶鋼組成、すなわち脱酸元素添加量が求められるようになった。
|