研究概要 |
合金の組織/特性制御に重要な役割をするミクロ偏析や非平衡第2相を従来法より制度よく予測する方法として、合金の凝固パス解析法に関して凝固時のkの変化と固相内拡散を考慮した漸化型凝固解析式を提案し、これをL1_2型(Al,Cr)_3Ti相を初晶とするAl-Ti-Cr合金に適用してそのミクロ偏析と非平衡第2相の予測を高精度で行う方法について明らかにした。凝固組織形成の基本単位であるミクロ的体積要素(volume element)での溶質保存則から求めた漸化型凝固解析式:C_<Li>=C_<Li-1>=[{1-(1-B・k_<i-1>)fs_i}/[{1-(1-B・k_<i-1>,)fs_<i-1>}]^<(ki_-1-1)/(1-Bki-1)を用いて、溶質分配係数kの変化を必要に応じた精度でn区間に分けて表し、i=1からnまで順に解くことにより融液濃度C_L及び固相濃度C_s(=k・C_L)の変化を計算し凝固パス解析を行った。ここで、B値は、例えばFlemingsモデルではB=2α、α=θf・D/L^2である。この解析において、凝固中に粗大化するデンドライト組織における固相内拡散のおこる基本単位を再検討し、拡散距離と拡散係数のより精度の高い評価を行った。固相内拡散の評価には、拡散の起こる基本単位として2次アーム間隔(d_2)の半分(volume elementの長さ:L=d_2/2)が通常は用いられているが、凝固中にcoarseningやcoalescenceを起こして次第にアームが粗大化するため、拡散単位は最終凝固組織のd_2の半分(L=d_2/2)とは異なり実効的にはL=d_2/4である。そこで、実験的に求めた固相内拡散係数(D)と体積要素の大きさ(実効体積要素長:L=s・d_2/2、s:構造因子(=0.5〜1))を再評価し、拡散程度を示す上記のパラメータαを用いて解析した。種々の組成のAl-Ti-Cr合金の凝固パスを初晶(Al,Cr)_3TiのTi及びCr分配係数(k_<Ti>,k_<Cr>)(融液組成の関数)を用いて計算し、晶出第2相を精度よく予測できることを明らかにした。さらに、ブリッジマン法によりL1_2型Al_<65>Cr_<10>Ti_<25>合金単結晶を作成して、降伏応力の温度依存性を圧縮試験により求め、高温で強化される異常温度依存性を数種の結晶方位について確認した。また、転位の電子顕微鏡観察を行い、強度の異常温度依存性の発現機構について考察した。
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