実際の生産準備業務では、コスト、品質、納期を満足させるための様々な活動が行われる。製品の原価は開発、設計の初期段階でほとんど確定してしまうことから、開発、設計段階でのコスト・マネジメントの重要性が多くの研究で指摘されている。それは、原価企画に代表される「製品原価をより源流で作り込む戦略的コスト・マネジメント」と予算や開発費を管理することに代表される「開発、設計活動のオペレーショナル・コスト・マネジメント」に分けて考えることができる。原価企画導入の中心となるのは、商品企画、開発、設計、生産技術部門と一部経理部門である。企画段階からのコストダウンは、ひとつの部門だけで処理できるものは少なく、関係部門の協力が不可欠となる。一方、製造業において間接部門の生産性向上は重要なテーマであり、開発、設計部門も例外ではない。多品種、少ロット、短納期などますます厳しくなる多様な製品開発の要求に応えるための効率の良い仕組が必要になっている。さらに、企業価値の一部として非財務的指標の評価が高まる中、設計ノウハウを知的資産として蓄積・伝承できる方法論も切望されている。本研究では、開発、設計におけるコスト・マネジメントのフレームワークについて整理するとともに、企業の実態を調査し、従来報告されている調査結果と比較しながら現状の課題について考察した。とくに、コスト・マネジメントのためのITを適用した取り組みの実態に焦点をあて、開発を進めているボクセルマッピングの形状特徴抽出やCAEの品質結果判定システムの位置づけを明確にした。さらに、開発、設計のコスト・マネジメントとオペレーショナルナレッジ・マネジメントの相乗効果について検討した。ITツールとマネジメント手法の適切な組み合わせから生産準備業務の付加価値向上を達成するためのブレークスルーが可能である。
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