大凝固温度範囲を有するために、回転水中紡糸法による連続合金細線の製作が困難と考えられる、平衡状態図が類似しているAg-Bi合金、Ag-Pb合金およびAg-Tl合金にAlを微量添加して合金細線の製作を試み、併せてそれらの合金の凝固組織制御を目的として、本年度は、Ag-Bi合金とAg-Pb合金の凝固組織の冷却速度依存性を調べた。 それぞれ純度99.9wt%のAg、BiおよびPbを用いて、初期Bi濃度が5at%、10at%、20at%および30at%のAg-Bi合金、および初期Pb濃度が5at%、10at%、20at%および30at%のAg-Pb合金の計8種類の合金を作成した。それぞれの組成の合金について、溶湯からの冷却速度を変化させて凝固させ、その凝固組織を走査型電子顕微鏡で観察した。冷却区間の平均冷却速度の定義における温度範囲を、その組成における液相線温度+30Kから共晶温度-30Kとした。 1〜100K/sの平均冷却速度の範囲で凝固させたが、この程度の範囲においては、いずれの合金系、組成においても樹枝状組織が形成され、デンドライト2次アーム間隔と平均冷却速度の関係を調べた。その結果、デンドライト2次アーム間隔が冷却速度のべき乗に反比例するという、従来の研究結果と同様の傾向が認められたが、べき指数は初期Bi濃度ならびに初期Pb濃度の増大に伴って増大し、その値は0.3〜0.5で、従来の1/3乗則に比べ、やや大きな値となった。それぞれの合金系について、デンドライト2次アーム間隔と平均冷却速度の関係式を初期Bi濃度および初期Pb濃度を含めて求めたが、両合金系を統一した関係式を実験結果から求めることは困難と考えられた。
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