研究概要 |
静磁場の印加により半導体融液中の対流が抑制される効果を、ローレンツ力を考慮して数値流体力学用ソフトウェアを用いて計算した。その結果、重力方向に対してキャピラリーの長手方向を平行に、磁束密度ベクトルを垂直に設定する条件が最も効果的に対流を抑制し、例えば融液同士の密度差が大きいSi-Ge合金の拡散実験においてもほぼ拡散律速状態に出来ることが予想された。この予想に基づき、本年度は融液同士の密度差の小さいIn-Sn及びGa-doped Ge融液中の相互拡散係数の温度依存性を求めた。拡散実験は磁束密度6テスラにてキャピラリー法で行った。相互拡散係数は,合金拡散対の濃度プロファイルをEDS、EPMA、四探針法により計測し,拡散方程式を解いて得られた式でカーブフィッティングを行うことで求めた。 その結果、200℃〜1200℃の間でのIn-Sn融液での温度依存性は,磁場の方向に関わらずFrohbergらの宇宙実験で得られた値とほぼ一致した。これは、熱対流に比べ溶質対流が物質輸送に与える寄与が小さく、結果として液相中の物質輸送がほぼ拡散律速状態になったと思われた。Ga-doped Ge融液では、加熱炉の制約上、重力と磁場の方向が平行である条件で1000℃、1100℃の2点のみ求めた。その結果、計測結果は従来の報告値とほぼ一致した。また6テスラにてGa-doped Ge合金の一方向凝固を行い、凝固後の結晶中のGa濃度分布から得た実行分配係数がほぼ1となったことから、融液中の対流の寄与がより弱い上述の拡散実験でも液相中の物質輸送がほぼ拡散律速状態となったと思われる。平成14年度でより高温でのGa-doped Ge融液、また実用上でも興味深いSi-Ge融液の拡散実験を可能とするために、1100℃以上の高温域での実験が可能な加熱炉を新たに製作した。
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