セラミックス微粒子を液体中に分散した高濃度スラリーを、印刷やコーティイングなどの手法により支持体の上に塗布し、それを焼成してセラミックス薄膜を形成する技術において、緻密な焼結体を得るためにはスラリー中におけるセラミックス粒子の分散状態を制御することが重要である。本研究は、セラミックススラリーのプロセッシング技術を確立するために、スラリーのレオロジー的性質を通して、その制御法を構築することを目的とする。今年度は、スラリーの水性化と薄膜焼成の可能性について基礎実験を行った。 1.セラミックススラリーを調製する際、工業的には有機溶媒が使用されることが多いが、近年、環境保全の観点から水系スラリーへの転換が急がれている。しかし、水系スラリーにおいてはレオロジーコントロールが非常にむづかしいという欠点がある。液体中に分散した複数個の粒子に一本の高分子鎖が吸着すると架橋により凝集が起こる。一般に、高分子吸着は不可逆であり、粒子間結合は固体的に振る舞うが、固体表面に対して親和性の弱い高分子を用いると、液体的性質を持った粒子間結合を形成することができる。水溶性の主鎖に疎水基を導入した会合性高分子を用いることにより、水系分散系においてこれまでにないレオロジーコントロールが可能となることを明らかにした。 2.有機溶媒系のセラミックススラリーに界面活性剤とバインダー用高分子を添加することにより、粒子間に熱運動でも形成破壊が可能な可逆架橋を導入した。凝集体中の粒子間結合に高い柔軟性があるので、塗布性のよいスラリーを調製することができた。このような系では乾燥過程においても粒子の再配列が可能であるため、粒子濃度の高いグリーンシートが得られ、それを焼成すると緻密なセラミックス薄膜となる。可逆架橋機構を応用することにより、厚さが10μmという薄膜のセラミックスを焼成することが可能となった。
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