セラミックス微粒子を液体中に分散した高濃度スラリーを、印刷やコーティングなどによりに塗布し、それを焼成してセラミックス薄膜を形成するというプロセッシング技術を確立することを目的として、スラリーの分散性とレオロジー的性質の制御に関する実験的研究を行った。研究成果は、粒子間相互作用の調整に関する基礎と印刷によるディスプレイ製造法開発の2つに分類される。 1.工業的にセラミックススラリーには有機溶媒が使用されることが多いが、近年、水系スラリーへの転換が急がれている。しかし、水系スラリーにおいては分散性およびレオロジーの制御が非常にむづかしいという欠点がある。水溶性をもつ主鎖のところどころに疎水基が導入された高分子を会合性高分子という。本研究では会合性高分子の架橋により凝集を発現させ、高粒子濃度でもニュートン流動となるスラリーを調製することが可能となった。さらに、セラミックスだけではなく、ラテックスを用いることにより粒子表面の性質に依存して高分子鎖の異なった部分が吸着し、それに応じて異なった粒子間結合が現れることを明らかにした。会合性高分子には粒子間相互作用に対して自己調整機能があり、レオロジーコントロール剤として高い可能性があることを示した。 2.情報技術の発展に伴い、映像表示デバイスの平面化が進んでおり、CRTの薄型化が望まれている。通常のモノクロムCRTの蛍光面は沈澱法により形成されている。この方法によると、沈澱途中において液体中に分散した蛍光体微粒子に凝集が起こるため、形成された表面の凹凸が激しく、平面CRTの蛍光面形成に適しているとは言い難い。このような問題を解決するためスクリーン印刷法と熱転写法により平面CRTの蛍光面を形成することを検討した。レオロジーコントロールされた蛍光体スラリーを用いることにより、電着法に代わる蛍光面形成技術を開発することができた。
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