セラミックス薄膜焼結体の内部構造はスラリー状態における粒子の空間配置と粒子間相互作用で決定されるので、高密度のセラミックス薄膜焼結体を得るためには、スラリーのレオロジー制御が重要となる。本研究はこのための新規レオロジー制御機構とセラミックススラリーの調製法を確立することを目的とする。分散系レオロジーに関する基礎研究では、レオロジー制御剤として会合性高分子を採用した。会合性高分子は水溶性をもった主鎖のところどころに疎水基が導入された高分子であり、分散系中では粒子間の架橋により分散系を凝集させる機能をもつ。凝集分散系は低せん断速度においてニュートン流動を示す。ゼロせん断速度の極限状態においても分散系が液体的応答を示すということは粒子間結合の形成と破壊が静置においても可逆的に起こっていることを意味する。また、ある程度高濃度の高分子を添加すると分散系は大変形下でも顕著な弾性応答が発現する。これは高分子の分子間会合のより柔らかく、変形性のある粒子間架橋が形成されていることを示すものである。可逆架橋の応用として、高分子と界面活性剤によりレオロジー制御したPZTスラリーを用いて、厚さが10μmの薄膜を焼成することに成功した。また、レオロジー制御された蛍光体スラリーをプラスチックフィルムに塗布し、これをCRTパネルに加熱転写し、その後熱処理することによりディスプレイを試作した。高濃度で表面平滑性のある膜面が得られ、従来のCRTと同程度の輝度をもつディスプレイを試作することができた。可逆架橋によるセラミックススラリーのレオロジー制御は微細構造をもつセラミックス焼結体の形成法として高いポテンシャルをもっている。
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