光CTは光を用いて酸素濃度を断層像で得るものであり、光を用いるため無侵襲であり、低コストで、従来の大型CT装置に比べ、小型化が可能であると考えられている。 原理は、近赤外光は比較的生体内を透過しやすく、分光学的酸素濃度指示物質である酸化型ヘモグロビン、還元型ヘモグロビンが存在するためこれらの吸光係数の差を利用して酸素濃度を測定するものである。しかし、生体内では光は強く散乱されるため従来のX線CTアルゴリズムを用いることができないため、新しいアルゴリズムの開発が必要である。そこで、本研究では光CTの新しいアルゴリズムの開発を目的とし、生体内での光の伝播現象をモンテカルロ法を用いたシミュレーションコードの開発を行った。 新生児の脳を模擬した直径70mmの球を想定し、表面での反射、屈折は無視した。光子1000個を想定し、散乱回数の上限は1万回と仮定したところ、ディテクターに入るまでに光が通った距離は921mm、要した時間は4075psであった。また、灰白質部分では他の部分より前方散乱が強いため、灰白質部分に垂直に近い角度で光子が突入すれば直進の傾向を示し、灰白質を抜け出すが、灰白質部分に水平に近い角度で光子が突入すると灰白質に沿って光が伝播する様子がみられた。光子数を5000万個にしたところ、疾患部が存在しない場合の光強度の平均は4.6×10^<-6>、疾患部が存在する場合の光強度の平均は3.1×10^<-7>と10倍以上の差が出た。これらの光強度の差を利用して逆問題を解く事により、生体内の酸素濃度を光CTによって測定できる可能性が確認された。以上より、脳を模擬したモデルにおいて、光の伝播現象をモンテカルロ法により解析することができ、疾患部の有無により光強度の差を得ることができた。これらの結果から逆アルゴリズムを解く事により酸素濃度を予測でき、光CTが実現可能であることが示された。
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