研究概要 |
光CTは光を用いて酸素濃度を断層像で得るものであり、光を用いるため無侵襲であり、低コストで、従来の大型CT装置に比べ、小型化が可能である。昨年度は生体内での光の伝播現象をモンテカルロ法を用いたシミュレーションコードの開発を行うことにより、光CTが実現可能であることを示した。今年度は光CTによる疾患部検出限界サイズに関し明らかにした。 脳腫瘍や脳梗塞は直径1cm以下である場合、比較的手術が簡単であることから、疾患部が直径1cm以下で発見することは非常に有効である。そこで、疾患部のサイズによる光強度の検出限界条件を調査するため疾患部の直径を1,2,3,4,6,10,20,30,40mmと種々変化させ、今までに開発した技術を用いて検出される光強度の影響を調査した。解析モデルは直径100mmの球で、皮膚、頭蓋骨、白質、疾患部の吸光係数を変化させることによって模擬した。解析結果から疾患部直径4mm以下では、光強度のばらつきが見られ、健康時と疾患時の間での光強度の差を得られなかった。これは疾患部の直径が小さく、5000万個のフォトンでは十分に疾患部を透過出来なかったためと考えられる。しかし、6mm以上の直径では解のばらつきはなく、健康時との差異が十分に表れたため、疾患部の発見が可能であると考えられる。次に疾患部の位置に対する光強度の関係を調査するため、上述の検出限界直径6mmを用いて疾患部5点を光源と検出器の直線上に等間隔に配置した。結果、光源から少し離れている位置では健康時と疾患時の光強度の差が確認されたが、位置による差異は見られなかった。光源に最も近い点では検出された光強度が健康時と変わらず、疾患部の存在を特定できなかった。しかし、対象物体あるいは光源と検出器の位置を180度回転させることにより、疾患部の存在を確認できると考えられる。以上の結果、新生児脳を模擬した直径100mmのモデルでは、疾患部6mmが限界検出サィズでであることが確認された。以上のことより疾患部がどの位置にあっても対象物体を回転させることで、光CTにより1cm以下の脳内疾患の有無が検出可能であることが確認された。本法を用いることによりX線を用いない安全な検診が可能となるため、脳腫瘍や脳梗塞といった病気の予防が可能となることが示された。
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