炉内脱硫が可能となる流動層石炭燃焼では、石灰石による炉内脱硫を高性能化する必要がある。石灰石による炉内脱硫反応では、アルカリ金属化合物が脱硫効率を向上させる可能性があることが知られている一方で、これまでに、脱硫剤として石灰石と同様の炭酸カルシウムからなりしかも水産廃棄物である貝殻が有効であると報告されている。そこで、本研究では、貝殻中に含有しているアルカリ金属と塩素に着目し、この影響を定量的および理論的に究明することを目的とし、アルカリ金属化合物微量添加石灰石による脱硫実験ならびに分子動力学計算による生石灰構造の変化に関する解析をそれぞれ実施した。石灰石へ様々なアルカリ金属化合物あるいは塩化物を微量添加して脱硫実験を行ったところ、脱硫率を向上させる最適な添加物質はNaClであった。さらに、貝殻、石灰石およびNaClを微量添加した石灰石の焼成後の結晶構造をX線回折分析装置によって分析したところ、貝殻とNaCl添加石灰石によるCaOは結晶化していたのに対し、石灰石のみのそれはアモルファス構造であった。このような実験事実から、脱硫性能は焼成後の試料の結晶構造に起因するものと考え、つぎに、この結晶構造の相違について分子動力学法により、CaO単独の場合とCaO1分子をNaCl1分子に置換した場合の構造変化について解析した。その結果、CaOのみではアモルファス化するような高温状態であっても、NaClを置換すればCaOの結晶構造は維持されることを明らかにした。さらに、KClおよびLiClに対しても同様の解析を行った結果、NaClがCaOの結晶化を最も促進した。これは、各アルカリ金属塩化物のポテンシャルエネルギーや各アルカリ金属のイオン半径の差異によるものであった。
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