研究概要 |
規則配列あるいは秩序分散した粒子集団が示す特異な性質は,21世紀のインフラを担う高効率・高機能材料,例えば,蛍光灯に取って代わる省エネルギ発光材料あるいはナノ粒子を数百nmの間隔を隔てて規則配置させた「完全反射膜」などへの応用が期待されている。粒子集団の構造形成過程には,粒子-粒子間および粒子-基板間相互作用が極めて重要な役割を果たすと考えられ,これらの相互作用因子や操作条件などが,形成される構造にどのように影響するかを予測可能な動力学的シミュレーション手法が切望される現状にある。本研究では,各種相互作用因子の構造への影響を実験的に把握した上で,分子動力学法(MD)とも離散要素法(DEM)とも異なる,いわばナノ粒子動力学と呼ぶべき,メゾスケールコロイド粒子シミュレーション手法の構築を目指している。本年度の結果概要は以下の通りである。 1.理論的検討:ブラウン動力学の基礎式であるLangevin方程式を基礎に置き,基礎差分式および計算アルゴリズムを検討した上でシミュレーションプログラムを開発し,ハイパフォーマンスコンピュータによりシミュレーションを行った。第一段階として水溶液中の静電的相互作用粒子系を対象とし,粒子間相互作用はDLVO力とした。基板上に形成される粒子配置構造について,見かけ上種々の条件下で秩序構造が発生したが,その秩序化を決定づける因子について有用な知見が得られた。 2.実験的検討:粒子-基板間に静電引力を与える目的で,サファイア基板とシリカ粒子の組み合わせで吸着実験を行い,SEMおよびAFMにより観察した。表面上での粒子吸着構造が基板の電位に極めて敏感であることが見出された。 以上の検討により,実験・理論の両面で,粒子秩序構造形成に関する詳細な情報を蓄積する手法構築に成功した。今後,相互作用力と粒子集団構造形成の動力学的理解に向けて,研究を進展させる予定である。
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