研究概要 |
組織化された界面反応場として、有機分子が組織的に会合した有機/水二相界面を挙げることができる。このような反応場は、物理的にサイズが制御されているのみならず、生体組織中の無機物が自在に微細構造を形成する現象、すなわちバイオミネラリゼーションとも関連しており、バイオミメティックな化学および材料化学の観点からも興味深い特殊な反応場であるといえる。このような組織化された反応場として、本研究では乳化液膜(W/O/W型エマルション)系を用い、無機微粒子材料の調製に関して検討した。 乳化液膜系の外水相から希土類金属イオンを抽出させ、内水相へ輸送することにより、内水相中で希士類リン酸塩微粒子を調製した。数百ナノメートルの粒径をもつ球形粒子が得られ、乳化液膜系を微小反応場として用いることで粒径・形状が制御できることを示した。同様の方法で調製したLaPO_4:Ce^<3+>,Tb^<3+>微粒子は、紫外光励起によって赤色の蛍光を示し、乳化液膜系の界面活性剤濃度の制御により粒径制御が容易であることを見いだした。 また、内水相中で粒径が数十〜数百ナノメートルに制御された希士類しゅう酸塩微粒子を調製し、これを焼成することでGd_2O_3:Eu^<3+>およびGd_2O_2S:Eu^<3+>赤色蛍光体微粒子を合成した。特に、酸硫化物の合成には、硫黄を含む窒素気流中での焼成が有効であることを明らかにした。 一方、同様の手法で合成した粒径50nm程度に微小化されたY_2O_3:Yb, Er粒子は、赤外レーザーの照射により可視光(赤色光)を発光する「赤外可視変換型(アップコンバージョン)蛍光体」として機能することを示した。また、母体をY_2O_2Sとした場合には、発光に関与する希土類元素を選択することにより、緑色や青色発光が可能な赤外可視変換型蛍光体微粒子材料が得られた。このように蛍光体粒子を微細化することによって、イムノアッセイへの応用が可能になるものと期待される。 さらに、粒径50nm程度の希土類しゅう酸塩微粒子を調製した乳化液膜系のW/Oエマルション液をそのまま基板上にスピンコート塗布し、焼成することによって、繊密なナノ粒子薄膜材料の調製が可能であることを明らかにした。
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