水の臨界温度近傍での水和電子およびOHラジカルの反応速度の温度・圧力依存性を詳細に研究した。反応速度の測定にはパルスラジオリシス法を用いた。時間分解能は約5ナノ秒である。水和電子とニトロベンゼンの反応速度は、ほぼ拡散律速で進行するが、臨界温度近傍では急激に反応速度は遅くなった。また、水和電子と亜酸化窒素の反応は反応距離依存性を考慮したマーカス型電子移動反応モデルにより説明できた。 OHラジカルと水素との反応速度は、気相での反応速度に比較して約10倍ほど速い。しかし、350℃近傍では、急激に反応速度は遅くなり、気相での値に漸近する。溶媒和を考慮した遷移状態モデルを用い、各温度での反応体の水和エネルギーを計算した結、旺、気相と水中での反応速度の違いを説明できることが分かった。一方、同様の計算により、OHラジカルとベンゼンとの反応では、350℃近傍でも、気相および水中での反応速度には大きな差があることが判明した。従って、高温気相中の反応速度を高温水へ適用することは、大きな誤差につながる可能性が高い。
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