Y型ゼオライトとともに、βゼオライト、モルデナイト、ZSM5などの種々のゼオライトの細孔内に炭素を充填した。充填方法は、ゼオライトの細孔内で高分子を熱処理により炭素化し、さらに炭化水素ガスの熱分解炭素を細孔外部より堆積させる二段法を用いた。さらに炭素化温度や炭素化時間を変化させ、規則的細孔構造生成のための最適条件を探索した。ゼオライトをフッ酸処理で溶解し、炭素を取り出した。現有のX線回折装置で生成した炭素の規則構造の解析を行い、さらに現有の透過型電子顕微鏡でその微視的構造を調べた。その結果、細孔径が小さいZSM5では細孔内に炭素を十分充填することができないが、Y型ゼオライトやβゼオライトのような比較的細孔径の大きいゼオライトからは、その規則性を反映した多孔質炭素が合成できることを明らかにした。 窒素分子の吸着実験から、本法で生成した炭素の細孔は径が1nm前後の比較的な大きなミクロ細孔であり、しかもその細孔は均一であることが分かった。天然ガス自動車などで使用されるメタン吸蔵材として細孔径1.14nmの均一な細孔をもつ多孔質炭素が最適であることが理論的に知られており、本研究で合成した多孔質炭素はまさに最適の細孔構造である。そこで、メタン吸蔵実験を行ったところ、炭素1g当たり0.255gのメタンが吸蔵された。この値は今まで報告されたなかで最も高い値である。また、高速で大容量の充放電が可能な電気二重層キャパシタの電極材として大表面積の多孔質炭素が注目されているが、この場合でも比較的な大きなミクロ細孔をもつことが大切で、本研究で合成した多孔質炭素が高い性能を示す可能性がある。そこで、水系と非水系で電気二重層キャパシタとしての性能を測定したところ、どちらの系においても高い性能を示した。
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