研究概要 |
コールタール蒸留留分である吸収油ならびタール軽油の粗分離に対して,溶媒抽出法および液膜分離法を適用した。溶媒抽出法においては,原料(吸収油あるいはタール軽抽)-溶媒(メタノール水溶腋)間の液液平衡閣係の実測,抽出後の抽出相中の抽出成分と溶媒成分との分離,これらの実験結果に基いた向流多段接触による抽出分離計算,などを行った。液液平衡関係の実測においては,メタノール水溶液により原料中の含窒素複素環式成分が他の成分に比較して選択的に抽出され分離できること,抽出後の抽出相から第2の油相により抽出成分を分離できること(逆抽出),などを明らかにした。抽出相中の抽出成分と溶媒成分との分離においては,前述の逆抽出に加え,蒸留法によりこの分離が可能であり,このときにも含窒素成分と他の成分がさらに分離されることを明らかにした。抽出分離計算においては,現実的な条件において原料の分離が可能であること,組成の異なる溶媒を抽出装置の異なる二箇所から供給することにより分離が向上すること,このとき蒸留法により抽出相の分離を行うことにより,操作性,分離性ともさらに向上すること,二種類の異なる原料(例えば吸収抽とタール軽油の組み合せ)を互いの逆抽出の溶媒としても用いることにより,2つの分離を統合した1つのプロセスのより2つの分離を行えること,などを示した。液膜分離法においては,原料-膜液(水)間および溶媒(炭化水素)-膜液間の液液平衡関係の実測,支持液膜透過,乳化液膜透過,などを検討した。平衡関係の実測においては,原料中の含窒素成分の分配係数は炭化水素の種類により大きく異なり,含窒素成分の分配係数が小さい炭化水素を用いることにより分離性能を向上させることが示唆された。支持液膜透過においては,種々の透過の特性を明らかにし,前述の分離性能向上の予測を実験的に確認し,物質移動係数を代表的な因子で相関した。乳化液膜透過においては,本操作が可能であること,実用的な透過速度が得られること,適切な溶媒の選定により分離性能が向上することの再確認,などを行った。
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