MFI型ゼオライトは0.数〜数μmの大きさのアルミノケイ酸塩の結晶であり、それを膜状にしたMFI型ゼオライト膜は分子節能を有する触媒膜の特性を示す。この膜を逐次反応に適用すると、反応物質の活性点との接触時間を均一にすることができる。その結果、逐次反応の中間体生成に適用すると、従来の充填層では観測されない選択率を得ることができると考えて研究を実施し、次に記載する成果を得た。 (1)ゼオライト膜の合成:強制撹拌式水熱合成法を開発し、分子節能を示すMFI型ゼオライト層を円筒状アルミナセラミックスフィルター外表面に合成することに成功した。 (2)濃酢酸水溶液からの水の選択分離:膜の緻密性を実証するために、合成した膜を98wt%濃酢酸水溶液からの水の選択分離に適用した。水の選択性を向上させるため、膜をH_2O_2で処理して親水性を向上させることで水のみを透過させることに成功した。この結果は分子レベルで膜が緻密であることを実証するものである。 (3)ゼオライト触媒の酸点分布と有効径の制御:ゼオライト触媒膜を構成するゼオライト微結晶の外表面を選択的に不活性化するため、分子径の大きいトリフェニルシラン(TPS)を用いたシラン接触分解(CCS)法を開発した。 (4)酸特性評価法の開発:触媒膜の活性点分布を精度良く評価するため、NH_3とCO_2の共吸着試料か減圧下で脱離スペクトルを測定する減圧TPDを開発した。 (5)逐次反応の中間体選択的生成反応:反応としてメタノールからのオレフィン生成反応を取り挙げた。未処理の膜はオレフィン選択率は80%(従来の充填層は7-50%)であったものが、TPS処理した膜は50〜98%の反応率でオレフィンを85%以上の選択率で得ることに成功した。
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