本研究では、多数のcDNAから多数のタンパク質合成を迅速に行えるシステムの開発を行った。機能性微粒子材料としては、温度を低下させることで凝集し、数百nmの粒子径であるにも関わらず迅速な磁気分離が可能であり、表面に種々の官能基を持つ温度応答性の磁性微粒子(数十nmのマグネタイトを包含した温度応答性モノマーおよびスチレンより合成した微粒子)を開発した。凝集粒子の再分散は、昇温することで行える。この温度応答性微粒子を分子シャペロン・フォールダーゼの固定化、および合成したタンパク質の迅速分離用アフィニティ微粒子の調製に利用する。本年度は、以下の3点について検討した。 ・合成タンパク質の高度分離法の確立…高度分離用のアフィニティ吸差体を得るために、微粒子表面にイミノジ酢酸ニッケルを持つ温度応答性磁性微粒子材料の開発を行い、その合成に成功した。一方、無細胞系において、目的とするタンパク質群をポリヒスチジン(タグとよぶ)と融合させた形で合成すると、このタグが微粒子表面のイミノジ酢酸ニッケルと特異的な相互作用するため、迅速なアフィニティ高度分離ができることを明らかにした。 ・無細胞迅速タンパク質合成・高度分離システムの構築…昨年度からの結果を総合したシステムの開発を行った。システムとしては、多数の反応を同時に行うため、多数のウェルを持つマイクロプレートを反応や分離の場として利用する形のシステムの構築を行った。 ・分子シャペロン・フォールダーゼによるタンパク質フォールディング制御…大腸菌由来の分子シャペロンGroEL/ESおよびDsbタンパク質によるタンパク質フォールディングの促進効果について明らかにした。GroEL/ESおよびDsbタンパク質は、ジスルフィド結合を持つタンパク質のフォールディングにおいては、協同効果を示すことを示した。
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