研究概要 |
乳酸は生分解性のポリマーの原料として注目され,光学活性な乳酸を生産するために発酵生産が行われている.経済性の向上の観点から発酵生産と同時に乳酸を反応液から分離除去する溶媒抽出法の適用が特に注目されている.しかし溶媒抽出法では,用いる有機溶媒および抽出剤が多くの場合乳酸生産菌に有毒であった.そこで本研究では有機溶媒および抽出剤に耐性な乳酸菌を用いる新しい乳酸発酵プロセスを構築することを目的として研究を行い,以下の知見を得た. 1.抽出剤耐性乳酸菌を用いた抽出発酵に関する研究 希釈剤であるデカノールに耐性のある火落ち菌が,炭酸カルシウム存在下で抽出剤トリオクチルアミンに耐性を示すことを見出した.そこでアルギン酸カルシウムに乳酸菌と炭酸カルシウムを包括固定化したカラムを用いて,乳酸の抽出発酵を行った.抽出相を添加することにより,最終的に生産される乳酸濃度,収率はそれぞれ10.2g/Lから17.5g/L,69.4%から84.6%までに改善することができた. 2.溶媒抽出法を用いた乳酸の効率的な分離法に関する研究 乳酸などの有機酸の溶媒抽出分離は古くから研究されてきたが,親水性の高い酸については高い抽出率が得られない欠点があった.そこで本研究では新しい協同抽出系による有機酸の回収を試みた.トリオクチルアミン/リン酸トリブチルおよびトリオクチルアミン/ジ-2-エチルヘキシルリン酸の各系で著しい協同効果を示すことを見出し,平衡関係を定量的に解析した.
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